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第231回 他人の苦痛に対する思いやり 〜 品性を完成する 〜

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 2021年度「冬期公開講座」プログラム テーマ:「介護の神学Ⅱ:がん哲学外来を通して見えてきた人の生と死」で、2日間(12月27日、28日)ハイブリッド講演の機会が与えられた(茗荷谷キリスト教会に於いて)。 大変貴重な充実した時であった。 12月27日の講座は、 講義1「なぜ、がん哲学外来を始めたのか」 講義2「人はなぜ、死が迫ると過去を悔やんでしまうのか」 講義3「なぜ、がん哲学外来で人生の目的が見つけられるのか」 であった。 12月28日の講座は、 講義4「病は終わりではなく、だれかのために生きる始まり」 講義5「こころにみことばの処方箋を」 であった。 各講座は、質問時間を含めて100分間であった。 それぞれ多数の質問があり、全力を尽くして答えた。 「人のからだに巣食ったがん細胞に介入しその人の死期を再び未確定の彼方に追いやり死を忘却させる方法を成就すること」 「人生いばらの道however(にもかかわらず)宴会」 「人は、最後に『死ぬ』という大切な仕事が残っている」 「医師の2つの使命」 (1)「学問的、科学的な責任」で、病気を診断・治療する→学者的な面 (2)「人間的な責任」で、手をさしのべる→患者と温かい人間としての関係 終わりは、<樋野先生を囲んで〜懇談の時>であった。 「人生に逆境も順境もない」(新渡戸稲造;1862-1933) 「人生の目的は金銭を得るにあらず、品性を完成するにあり」(内村鑑三;1861-1930) を紹介した。 筆者の故郷は、美しい日本海に面した小さな村の出雲市大社町鵜峠である。  若き日、『他人の苦痛に対する思いやりは、医学、医療の根本』であることを教えてくれたのは、鵜峠から8キロほど、峠を越えた出雲大社にある、712年に編纂された『古事記』に登場する『因幡の白兎の大国主命』である。

第230回  生涯書生 〜 「高度な専門知識と幅広い教養」〜

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 2021年12月21日 『柏がん哲学外来』に赴いた(柏地域医療連携センターに於いて)。    1組、約60分で、3組の個人面談の機会が与えられた。 大変貴重な時であった。 終了後は、スタッフと2021年の思い出、2022年の企画の話などで、大いに盛り上がった。 その後、有明の武蔵野大学看護学部1年生の『病理学』の対面授業に向かった。 今回は、「人体病理学と実験病理学:病理学と臨床医学:診断病理学(病理診断、細胞診断)、病理解剖、ゲノム、個人差、遺伝性がん、細胞・組織とその障害:細胞の構造と機能、組織(上皮組織、支持組織、筋組織、神経組織)、細胞障害、壊死とアポトーシス:壊死(凝固壊死、融解壊死、特殊な壊死)、アポトーシス、萎縮:生理的萎縮、無為萎縮、圧迫萎縮、再生医療(幹細胞、ES細胞、iPS細胞)」について、教科書を音読しながら100分の講義をした。 真摯な学生の態度に接しながら、大変充実した時間であった。  2021年12月22日は、『新渡戸記念中野総合病院 がん哲学外来』(新渡戸稲造記念センターに於いて)であった。  終了後、新渡戸記念中野総合病院の『訪問看護ステーション』に立ち寄った。 皆様の心優しい姿勢には感激した。 その後、第518回『新渡戸記念中野総合病院 新渡戸グローバルCPC』に出席した。 新渡戸記念中野総合病院・脳神経内科臨床部長、新渡戸新 脳神経研究室(新渡戸脳研) 室長で、順天堂大学客員教授(神経学講座)でもある内原俊記 先生が主催された。 今回は、「Lewy小体病」について学んだ。 本当に日々勉強である。  筆者は、医師になり、すぐ、癌研究会癌研究所の病理部に入った。 そこで、病理学者であり、当時の癌研究所所長であった菅野晴夫 先生(1925-2016)との大きな出会いが与えられた。 菅野晴夫 先生の恩師である日本国の誇る病理学者:吉田富三(1903-1973)に繋がった。 吉田富三は日本国を代表する癌病理学者であり、菅野晴夫先生の下で、2003年、「吉田富三 生誕100周年」記念事業を 行う機会が与えられた。 必然的に『がん哲学』の提唱へと導かれた。 さらに、「陣営の外=がん哲学外来」へと展開した。 吉田富三は「顕微鏡を考える道具に使った最初の思想家」であり、「顕微鏡で見たがん細胞の映像から得た哲学」を実感した。 「病理学」は、顕微鏡を

第229回  あくせくしない態度 〜 人生の意義と目的の『静思』〜

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  2021年12月14日、武蔵野大学看護学部1年生(有明)の『病理学』の対面授業に赴いた。『癌細胞の病理』&『人間社会の病理』の相関を述べた。 【『がん学』 は「がん」に関しての学問で、『形態』 、『起源』、『進展』などを追求する学問分野である。当然がん研究者だけのものでなく、一般社会の人々の為の学問でもある。がん研究者が『がん』 をどの様に考えるかは、とても大切なことである。なぜなら『がん』に対する概念が世界観、人生観、ひいては日常の決断や行動をも時には決定するからである。「がん」の『起源』 と『進展』を学ぶことは、ある意味では人生の意義と目的の『静思』 へとも導くものと考える。これこそ、『がん研究者の社会貢献』 である。】と、  また、『「最も剛毅なる者は最も柔和なる者であり、愛ある者は勇敢なる者である」とは、「高き自由の精神」を持って医療に従事する者への普遍的な真理であろう。「他人の苦痛に対する思いやり」は、医学、医療の根本である。』と語った。 さらに、「偉大なるお節介症候群」(10ヶ条)を示した。   1)「役割意識&使命感」   2)「練られた品性&綽々たる余裕」   3)「賢明な寛容さ」   4)「実例と実行」   5) 世の流行り廃りに一喜一憂せず、あくせくしない態度   6) 軽やかに、そしてものを楽しむ。自らの強みを基盤とする。   7) 新しいことにも、自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力する。   8) 行いの美しい人(a person who does handsome)   9)「冗談を実現する胆力」〜 sense of humor の勧め 〜 10)「ユーモアに溢れ、心優しく、俯瞰的な大局観ある人物」 そして、「医療者の2つの使命~」を挙げた。 1)「学問的、科学的な責任」で、病気を診断・治療する→学者的な面 2)「人間的な責任」で、手をさしのべる→患者と温かい人間としての関係  真摯な学生の態度には、大いに感激した。 大変充実した講義であった。

第228回 人との貴重な繋がり 〜 心温まる & 励まし & 愛情あふれる 〜

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 この度、新刊(『へるす出版』2021年11月30日)が発行された。  『はじめに』には【『筆者が、順天堂大学医学部病理・腫瘍学教授を定年退職後、新渡戸稲造記念センター長を拝命した新渡戸記念中野総合病院の近くにある『へるす出版』の事務局の斉藤浩司 氏から2021年3月30日、「埼玉医科大学総合医療センターの石田秀行 先生からご紹介をいただき、メールをさせていただきました。 樋野先生が 新渡戸記念中野総合病院に ご出勤され、ご都合がいいときに、一度、ご挨拶(出版企画に関してのご相談)にうかがえればと思っておりますが、いかがでございますでしょうか。 不躾ではございますが、ご検討いただけますと幸いに存じます。」との心温まるメールが届いた。 そして、この度、『がん細胞から学んだ生き方 〜「ほっとけ 気にするな」の がん哲学』出版の実現の運びとなった。「ほっとけ 気にするな」は、筆者が作詞した曲のタイトルでもある。 本当に、人生の不思議な流れを 痛感する日々である。 筆者は病理医として、顕微鏡でがん細胞を覗いてきた。「がん細胞で起こることは、人間社会でも起こる」=「がん細胞の病理学」と「人間社会の病理学」=がん哲学が、本書の起点である。』と記述してある。 早速、「私と家族が拝読させて頂きました.先生の人生でのお考えそのものが平易な表現で凝縮された珠玉の1冊と感じました.妻は周りのがんサバイバーの方に折に触れてご紹介してみたいと申しております.」と石田秀行 先生から、大いなる励ましのメールを頂いた。 ただただ感謝である。  また、立川市在住の稲墻正 氏から、【購読中の新聞のインタビュー記事に、今期でソフトバンクの監督を退いた工藤公康 監督の子供で俳優の工藤阿須加が出ていました。 その中で、工藤阿須加が引用していた「毎朝、目覚めたら『今日は最高の一日にしよう』と言ってから起きるのが習慣です」、という言葉が心に響きました。 短い言葉の中に、積極さと深さが感じられました。 この言葉は、3年前に、講演をしていただいた樋野興夫先生の本のタイトル「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい」(「幻冬舎」2015年8月5日)に通じる言葉だと思いました。】との愛情あふれるメセージを頂いた。 人との貴重な繋がりを体験する日々である。

第227回「新・代表的日本人」の資格〜 「Vision, Passion, Mission」を語る 〜

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  2021年12月1日「東中野キングス・ガーデン」を訪問した。 「東中野キングス・ガーデン」で「がん哲学外来 東中野メディカルカフェ」が開設されて、今年(2021年)は5周年とのことである。 代表の奥山寧 氏が、この度「中野がんカフェ連絡会」を設立された。 来年(2022年)は、新渡戸稲造(1862−1933)生誕160周年記念に合わせて、合同(「がん哲学外来白鷺メディカル・カフェ」、「東京医療生活協同組合 新渡戸記念中野総合病院 がん哲学外来」、「がん哲学堂カフェ」、「がん哲学外来 東中野メディカルカフェ」)の『「中野がんカフェ連絡会」設立記念 〜 新渡戸稲造生誕160周年記念 〜』シンポジウムが開催される予感がする。  1932年、東京医療生活協同組合が設立され 初代の理事長は新渡戸稲造である。 新渡戸稲造は1933年、理事長在職中に、カナダのバンクーバーで逝去した。 筆者は、新渡戸稲造生誕150周年記念(2012年)で、息子が、バンクーバーのUBC大学(The University of British Columbia)に入学した当時 バンクーバーを訪問した。 思えば、筆者は2005年に,国際癌学会議(オスロ)の招待講演(ウィルス肝炎性肝癌),フィラデルフィアでの講演(遺伝性腎癌)さらにバンクーバーのBritish Columbia大学にある新渡戸記念庭園を訪問する機会が与えられた。 まさに「過渡期の指導原理と新時代の形成力」の探究の旅であった。 飛行機の中では,英文で書かれ,現在でも世界に誇る名著とうたわれる 新渡戸稲造 著『武士道』(1899年)& 内村鑑三(1861−1930) 著『代表的日本人』を熟読玩味する時でもあった。  あらゆる分野におけるトップの品性,人格が近頃盛んに問題にされている社会状況にあって,「現代教養としての専門性とその裾野としての教養」を考えるタイムリーな時ではなかろうか! 何かと気ぜわしい現代,あらゆる分野で閉塞感が漂う時代において,じっくりと深く「静思」することは,学問,人生の胆力と「Vision, Passion, Mission」を語るためにも大切であると考える。 筆者は『新・代表的日本人』なる本をいつか書いてみたいと密かに夢見るものである。『新・代表的日本人』の資格として,次の4条件を挙げたい。 1.幅の広い