第494回 『一個の人間にかえる』 〜 『ほっとけ、気にするな』の実践 〜
2025年8月26日、ひばりヶ丘駅→池袋駅→大宮駅→福島駅に向かった。 大宮駅から福島駅への新幹線の車内から、農家、畑、森林を眺めながら、大いに心が癒された。 福島も猛暑であった。 福島駅からは、タクシーで『福島県立医科大学附属病院』に到着した。『がん相談支援センター』で2009年スタートした『吉田富三(1903-1973)記念福島がん哲学外来』を行った。 大変、貴重な個人面談の機会が与えられた。 2019年には10周年記念市民公開講演会が企画されたものである。 まさに『ほっとけ、気にするな』の実践である。
筆者は医師になり、癌研究会癌研究所の病理部に入った。 病理学者であり当時の癌研究所所長であった菅野晴夫先生(1925-2016)の恩師である吉田富三との『邂逅』に繋がった。 菅野晴夫先生とは、【2003年『日本病理学会』と『日本癌学会』で『吉田富三生誕100周年記念事業』】を行う機会が与えられた。
【『電子計算機時代だ、宇宙時代だといってみても、人間の身体の出来と、その心情の動きとは、昔も今も変ってはいないのである。 超近代的で合理的といわれる人でも、病気になって、自分の死を考へさせられる時になると、太古の人間にかえる。 その医師に訴へ、医師を見つめる目つきは、超近代的でも合理的でもなくなる。 静かで、淋しく、哀れな、昔ながらの一個の人間にかえるのである。 その時の救いは、頼りになる良医が側にいてくれることである。(吉田富三 1968年)』&『医師が患者という人間をみる「眼」の問題は、近代医学教育と、医師の修練過程のどの部分で、どれだけ重視されているのか。 そこを考えると、疑問なきを得ない(吉田富三1967年)】の原点回帰である。
【『がん細胞は増殖して仲間が増えると、周囲の正常細胞からのコントロールを脱し、悪性細胞としての行動をとるようになる。 君達学生諸君も似たところがある。 一人ひとり話をすると、常識もあり善良な青年にみえるのだが、学生自治会として集団行動をとると、変なことを云ったりしたりする。』(吉田富三の授業)&『最初に、正常細胞の変化したものとして、正常との比較においてこれをみる。 次には、癌細胞同士を比較する。』 (吉田富三の癌の理解の道)】