第468回 『生命の原理』 〜 相互に影響しながらバランスを保つ 〜

 2025年4月13日、wifeとCAJ(Christian Academy in Japan)のキャンパスの中にあるKBF(Kurume Bible Fellowship)に出席した。 1992年 癌研究所実験病理部部長時代の月刊誌『いのちのことば』の連載【『内なる敵』の『癌細胞の病理』と『人間細胞の病理』】が、鮮明に思い出された。 

 ドイツの神学者パウル・ティーリヒ(Paul Tillich 1986~1965)は、【人が現実の社会や状況の中で直面する問いに対し、答えることこそ 神学の役目であり『哲学の問いと神学の答え』という関係はそこから生まれる】と説いた。 筆者は、若き日 ティーリヒの【『神は癌をもつくられた』という言葉】を読んだものである。 【『愛なる神が癌をつくられた』としたら、その癌は人間にとって、必ずしも悪いものとは言えないのではないかと!】のティーリヒの言葉が、ふと蘇った。 人間は、【『苦難』を取り違えて受け取っている】のではなかろうか!?

 筆者は、病理学者として、これまで5万人以上のがん細胞を見てきた。 患者一人ひとりのがん細胞に同じものは無い。 人間もまた、一人ひとりが違う個性をもったものとして造られている。 顔の似ている人であっても、親子であっても兄弟であっても、双子であっても、人間はそれぞれが違う。 内村鑑三(1861~1930)は、『真理は円形にあらず。楕円形である』と語った。 【『円形』は、何ごとも円満に平和的である姿のように受け取れるが、実は排他的で柔軟性に乏しく、外部からの力や異物に弱い姿】なのであろう。 空気を入れた風船を想像しても良いかもしれない。 小さな針の一刺しで跡形も無く破裂してしまう。

 『楕円形』であることは、見た目は、いびつで美しさに欠けるが、外からの圧力や刺激には柔軟に対応できる。 『楕円形』は、中心が二つある。 二つの中心が緊張を保ちつつ絶妙に バランスを取りながら 共存している姿が『楕円形』である。 体にも、『交感神経』と『副交感神経』がありバランスを保っているし、また一つのがん細胞の中にも『がん遺伝子』と『がん抑制遺伝子』がある。 両者が相互に影響しながらバランスを保ち、『がんの発生』を抑えている。 『生命の原理』とは、まさに『楕円形の原理』で成り立っている。

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