第382回  不連続の連続性 〜 『遺伝性がん』&『環境がん』そして『がん哲学』へ 〜

 筆者は、2024年2月8日『肝炎等克服政策研究事業』評価委員会にZoom参加した。 国立感染症研究所所長 脇田隆字先生の司会で【純度の高い専門性と社会的包容力】のある委員会であった。 『肝炎領域の若手研究者が減少していますので、少しでも若手を導入して活性化させたいところです。』&『真の国際人の育成=肝炎等克服政策研究事業の時代的要請』を痛感する日々である。

 想えば、筆者は、癌研病理部の時代、『肝癌におけるB型肝炎ウイルス(HBV)DNAの組み込みを日本で最初に報告』したのが鮮明に思い出された(下記)。

Hino O., et al: Detection of hepatitis B virus DNA in hepatocellular carcinomas in Japan. Hepatology 4: 90-95, 1984

 そして、『アインシュタイン医科大学肝臓研究センター』(1984〜1985)、『フォクスチェース癌センター』(1989〜1991)への留学の機会が与えられ、『忘れ得ぬ Knudson(1922-2016)との出会い』にも繋がった。




 【樋野興夫 先生は、― 。また、遺伝性腎発がんラットの原因遺伝子(Tsc2)を同定(tuberous sclerosis complex, TSC)し、― 進行過程で高発現してくる新規遺伝子(Erc)を発見し、Erc遺伝子産物は、血中に分泌され、血液診断に使用できることを明らかにした。― これを検出するELISA (酵素結合免疫検査) 測定キットの開発を行った。 そして、2005年日本で初めて『アスベスト・中皮腫外来』を開設し、早期発見・治療を目的とした検診体制の構築した。 さらに、外来で患者と接し、医療者と患者の『対話』の重要性を再認識すると同時に、治療法が確立されておらず治ることが難しい患者さんが、心安らかに充足した日々を送り、穏やかな最期を迎えるために、自ら人生や死について考えるための支援、いわゆる『哲学的なアプローチ』が必要だとの思いに至り、 2008年、医療者の立場からの『がんの知識』の提供ではなく、医療現場と患者、その家族の間にある『隙間』を埋める『対話の場』として順天堂大学で『がん哲学外来』を開設した。― このように、樋野興夫先生は、『純度の高い専門性と社会的包容力』をもって、『遺伝性がん』から『環境がん』そして、『がん哲学』へと『不連続の連続性』で、先進されている。】

との『心温まる励まし』を頂いたものである。


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