第367回 『医の倫理』 〜 『把握、洞察、視野の広さ、優雅、力強く』 〜

 2023年12月13日、病理医の筆者は、新渡戸稲造記念センター長を務める新渡戸記念中野総合病院の講習会『医の倫理』での講演を依頼された。 タイミング的には筆者の『われ21世紀の新渡戸とならん』(2003年発行)出版20周年記念でもある。 新渡戸記念中野総合病院では、新渡戸稲造(1862-1933)著『武士道』(矢内原忠雄:1893-1961)訳の読書会も定期的に開催されている。 まさに、『ひとり、静まる時をもちましょう』は、読書会の原点でもあろう。

 『病理学』は、『形態』、『起源』、『進展』などを追求する学問分野である。当然 病理医だけのものでなく、一般社会の人々の為の学問でもある。 病理学者が『病気』 をどの様に考えるかは、とても大切なことである。 なぜなら『病気』に対する概念が 世界観、人生観、ひいては日常の決断や行動をも 時には決定するからである。『広々とした病理学=病理学には限りがないことをよく知っていて、新しいことにも自分の知らないことにも謙虚で、常に前に向かって努力しているイメージ』(菅野晴夫先生:1925-2016の言葉)である。

 【1919年パリ講和会議が開催されている頃、『スペインかぜ』がフランスでも猛威をふるっていて、パンデミック(世界流行)で、感染者6億人、死者4,000万~5,000万人にも達したと推定されている】と、以前に聞いたものである。 そのとき、新渡戸稲造はパリにいて、その後、国際連盟事務次長に就任している。トーマス・カーライル(Thomas Carlyle、1795-1881)の影響を受けた新渡戸稲造は、『common sense(社会常識)を備えもった柔軟性のある人格者』と謳われている。 まさに『把握、洞察、視野の広さ、優雅、力強く=新渡戸稲造』である!

『医の倫理』

1)「学問的、科学的な責任」で、病気を診断・治療する→学者的な面

2)「人間的な責任」で、手をさしのべる→患者と温かい人間としての関係

 まさに、『医の倫理』は、『潜在的な需要の発掘 & 問題の設定』の提示であろう! ある意味では『人生の意義と目的の静思へ導くもの』と考える。


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