第201回 『教養を深め、時代を読む「具眼の士」の種蒔き』 〜 『自らの強みを基盤にする』 〜

 順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科の対面授業「病理学論」に赴いた。  病理学の「理念、使命、社会貢献」を語った(下記)。

理念:「世界の動向を見極めつつ 歴史を通して今を見ていく」

使命:『俯瞰的に「人間」を理解し「理念を持って現実に向かい、現実の中に理念」を問う人材の育成』

社会貢献:『複眼の思考を持ち、視野狭窄にならず、教養を深め、時代を読む「具眼の士」の種蒔き』

 癌の理解の道は、{「最初に、正常細胞の変化したものとして 正常との比較においてこれをみる。  次には、癌細胞同士を比較する。」であり、『がん病理学』は「がん」に関しての学問で、『形態』、『起源』、『進展』などを追求する学問分野である。  当然 がん研究者だけのものでなく、一般社会の人々の為の学問でもある。  がん病理学者が『がん』をどの様に考えるかは、とても大切なことである。  なぜなら『がん』に対する概念が 世界観、人生観、ひいては日常の決断や行動をも 時には決定するからである。  「がん」の『起源』 と『進展』を学ぶことは、ある意味では人生の意義と目的の『静思』 へとも導くものと考える。  これこそ、『がん病理学者の社会貢献』である。  電子計算機時代だ、宇宙時代だといってみても、人間の身体の出来と、その心情の動きとは、昔も今も変ってはいないのである。   超近代的で合理的といはれる人でも、病気になって、自分の死を考へさせられる時になると、太古の人間にかへる。  その医師に訴へ、医師を見つめる目つきは、超近代的でも合理的でもなくなる。  静かで、淋しく、哀れな、昔ながらの一個の人間にかへるのである。  その時の救いは、頼りになる良医が側にいてくれることである。}(吉田富三)であると述べた。

 筆者の「癌学事始」は、山極勝三郎(1863-1930):「類稀な忍耐を持って、日本の独自性を強く主張し、日本の存在を大きく世界に示した」、「段階ごとに辛抱強く丁寧に仕上げていく 最後に立派に完成する」。  吉田富三(1903-1973): 「事に当たっては、考え抜いて日本の持つパワーを充分に発揮して大きな仕事をされた。」  Alfred G. Knudson(1922-2016):「(1)『複雑な問題を焦点を絞り単純化する』、(2)『自らの強みを基盤にする』、(3)『無くてならないものは多くない』、(4)『無くてよいものに縛られるな』、(5)『Red herring(相手をその気にさせて 間違った方向に行かせる)気をつけよ』」である。

 「学生からどの本を読めば良いのでしょうか?」との質問された。  驚きである!  真摯な姿には 大いに感動した。  早速、順天堂大学学術メディアセンターの城山泰彦 氏から「樋野先生の当該分野のご著書は、添付写真のとおり『がん哲学外来に関する図書コーナー』として、まとめて並べております。  実際に手に取って、ご覧いただけましたらありがたいです。」との心温まるメールが届いた。ただただ感謝である。  学生にとって、良き人生の3大邂逅『先生・友・読書』となれば、大いなる喜びである。




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